ボウリングは楽しくやりたい。
※これはAIによる自動生成の記事です、
目次
BGM
大学の授業で「ボウリング」があった日の話
大学時代の授業といえば、実験や演習、講義室でひたすら教授の話を聞く……そんなイメージが強い。特に理系だと、朝から晩まで研究やレポートに追われて、遊びの要素なんてほとんどない。そんな僕の大学生活の中で、一つだけ異質な授業があった。「ボウリング」だ。体育の一環として用意されている授業で、なんと出席して1ゲーム最後までやれば単位がもらえるという、ほとんど天国のような内容だった。
僕はその授業が開講されると知ったとき、正直「これはおいしいぞ」と思った。ただ単に楽というだけじゃない。体育館ではなくボウリング場に行くという非日常感、そしてなにより「他学科の学生も受けに来る」という点が魅力だった。うちの学科は男だらけで、教室を見渡せばいつも男子校のような光景。それが、ボウリング授業には他の学科、特に女子の受講者が一定数来る、という噂があった。
大学生にとって、同年代の異性と自然に接点を持てる場なんて、実はそんなに多くない。サークルに入っていない僕にとっては、数少ないチャンスだった。「ボウリングでかっこいいところを見せて、できれば話すきっかけつくれたらいいな」なんて、大学1年にありがちな淡い期待を胸に、当日を迎えたのである。
期待を胸にボウリング場へ
授業の日、僕は少し早めに到着した。ボウリング場のガヤガヤした空気、レーンの奥で規則正しく倒れるピンの音。普通の授業ではまず味わえない環境に、自然と気持ちが軽くなる。入口付近にはすでに何人か学生が集まっていて、その中には本当に女子の姿があった。
「噂は本当だったんだ……!」
その瞬間の僕のテンションは、普段の倍ぐらいに跳ね上がっていた。女子が数人、友達同士で楽しそうにおしゃべりしている。服装もキャンパスとは微妙に違って、なんだか新鮮に見える。「この雰囲気、大学っぽいじゃん!」と心の中でガッツポーズした。
受付の職員と先生が出席を取り、いよいよレーン分けが発表される。僕は内心、祈るような気持ちで紙に書かれた番号を確認し、「このあたりに女子来ないかな」「せめて一人でも……」。そんな淡い期待を抱きながら、自分のレーンへ向かった。
男、男、男。気配なし
そして辿り着いたレーンにいたのは――
見事に男ばかりだった。
しかも、僕以外の全員が初対面。中にはガタイの良い、どう見ても体育会系の男子までいる。僕が心の中で「え?」とつぶやく間にも、他の男子が次々とそのレーンに集まり、気づけば6人中全員が男。女子の気配など一切ない。
僕はチラッと左右のレーンを見た。するとどうだろう。
左のレーンは女子4人グループがキャッキャしながら球を選んでいて、すでに華やかな雰囲気が漂っている。
さらにその隣のレーンでは、男女混合の楽しそうなグループが賑やかに写真まで撮っている。
それに比べて僕のレーンは、なんというか……鉱山の入口くらい静かだった。
「よろしくお願いします」
とお互い軽く会釈はしたものの、その後が続かない。みんな初対面で控えめだし、特に話題もない。男子同士でも仲良くなることはもちろんあるけれど、せめて雰囲気が賑やかなら話しやすい。しかし周りが楽しそうなだけに、僕たちのレーンの空気がより重く感じられるのだった。
10フレームの長い戦い
先生からの説明が終わり、「1ゲームは必ずやること。スコアは問わないが途中で放棄した場合は単位を認めない」とのアナウンスがあった。つまり、つまらなくても10フレームを投げ切らないといけない。
僕は半ば諦め、ひとまず投げ始めた。
ガーター。
スペア。
7本。
そんなふうに黙々と進むボウリング。
他の男子たちも似たような感じで、淡々と投げては戻ってくる。笑い声もなければ、ハイタッチもない。ただ時々、
「……うまいっすね」
「いや、たまたまですよ」
そんな短い会話があるだけ。
一方、隣からは
「えー!すごいストライクじゃん!」
「待って、動画撮るからもう一回投げて!」
キャッキャ!ワイワイ!
とにぎやかな声が響いてくる。
その度に僕たちのレーンは、沈黙の深さを増していった。
10フレームがこんなに長く感じたことは、人生で初めてだったかもしれない。
やっと終わったのに、何も起きない
ゲームが終わると、先生がスコアを軽くチェックし、「はい、単位は認めます。お疲れさまでした」とだけ言って解散になった。
全員、近所のコンビニにでも行くかのようなテンションで帰っていく。僕も軽く会釈してそのまま帰路についた。
ボウリング場を出ると、楽しそうだった他のレーンの学生たちがまだ外で盛り上がって話していた。女子たちが笑いながら歩いていくのを横目に見ながら、僕は「なんで俺のレーンだけあんな修行僧の集会みたいな空気だったんだろう……」と、妙な脱力感に襲われた。
結局その日、誰とも仲良くならず、新しい出会いもなかった。ただ単位だけは確実にもらえた。けれども、僕が期待していたキラキラした大学生活のイベントとは程遠い、なんとも味気ない一日だった。
今になって思うこと
今思えば、ボウリングで女子と仲良くなるなんて発想自体が青かったのだと思う。レーンがどこになるかなんて運次第だし、仮に女子がいたとしても話しかける勇気があったかどうかも怪しい。
でもあの日の僕は、大学生らしい淡い期待を確かに抱いていた。
そして期待が打ち砕かれた時の、あの妙な静寂と虚無感は、今でも鮮明に覚えている。
あの授業は結局「単位のためだけのボウリング」で終わってしまったが、逆にその微妙すぎる思い出のおかげで、今では笑い話にできるようになった。ちょっと情けないけれど、なんだか青春っぽい出来事でもある。
大学生活というのは、本気で期待した時に限って意外と何も起こらない。だけど、それも含めて面白いのかもしれない――そんなことを、ボウリング場の静かなレーンの記憶が僕に教えてくれた。